タレントアビリティ

 珍しく首を突っ込むような発言をする万。珍しくというか予想通りというか、だから添は素直に答えた。
 能恵がああなっている以上、まともな会話が成り立つのは万だけ。それに間違いは無い……、はず。

「放任主義。金銭にも学校にも干渉しない」
「バイトしてんの?」
「万引きでパクったブツを質入れしてえんやこら、な生活やってる中学生なんていると思う?」
「そいつだろ」
「……はい」
「はーっ……。そりゃもはや親じゃねぇよな……。ってか万引きってばれたんだろ?」
「そ。能恵さんがたまたま見かけ時はあの人が無理矢理解決したけど、昨日は親もお呼ばれしちゃってさ」
「……だいたい分かった。それでその時だけ親ヅラした事にあのガキがキレた。違うか?」
「お前はホントに分かるやっちゃな……。そゆことだ。その態度にまたまた能恵さんがキレたってわけで、現在絶賛すれ違い中」
「そのガキは態度を変えるつもり無し。能恵さんも変えるつもり無し。七面倒くさい話だな、そりゃ」

 屋上から空を仰ぐ万。今日は天気がいいから、きっと歌姫の歌も透き通るだろうなと、隣で添は考えていた。
 そうやってしばらくの沈黙が流れてから、顔を降ろした万の表情はまさに悪巧み、というものでしかなかった。

「なあ、いーこと考えちったぜぇ?」
「……言ってみ」
「ま、その前にさ。ちょいとケータイ貸せよ。能恵さんに連絡取りたいんだ」
「番号教えるけど?」
「それは止めときたいんだよな。何かと絡まれそうだし。ほら、早く貸せっての、むーなしろ」
「はいはい」

 学生服のポケットから取り出しかけた携帯は呆気なく万に奪われてしまった。勝手にピコピコされて耳に当てられる。