タレントアビリティ

「万」
「ん。お前からなんて珍しいじゃん、空白」
「いや、昨日悪かったかなって思ってさ」
「あーっと……。能恵さん暴走してたわな、確かに。で、それだけ?」
「それだけ」
「ってわけじゃないだろ、お前に限って」

 昼休みが半分くらい経った頃。パンをとりあえず胃の中に収めてから屋上を降りた時に、添は万を見かけた。相変わらず彼の周りには何人かの男女がいて、他愛のない話で盛り上がっていた。
 日頃ならまず添は避ける。あんな明るくてきゃぴきゃぴした世界に自分が飛び込めるかと言えばそれはノー、普通に無理。
 けれど今日は話す事がある。それが昨日の事であるのは明白であって、それを察せない万ではない。悪いけど、と万は取り巻きに断って、屋上へ着いて来てくれた。
 そこでの会話の中。やっぱり突いてくれるのが万だ。

「能恵さんの事だろ? あと、昨日のよく分からんガキ」
「まあ、そういう事だよ」
「お前とはちげーからな。それなりに会話の数こなしてっから、何と無く分かるっつーか。で、あの2人か。見た感じ食い違い甚だしい、って具合だったよな」
「具合というか、そのまんまだよ。能恵さんの言葉が全然効いてない」
「そりゃあ……。お前もだろ」
「俺はズレてるからさぁ。才能のカケラも無いから、能恵さんの言葉は意味を成さないんだよ」

 彼女の言葉は、対象者の才能と欠陥に何よりも響く言葉。才能を持ち上げ欠陥を補い、対象者の持てる限りの才能を引き出す事が出来るのだ。
 ただそれは才能があれば、の話。何も無い添に能恵のそれは無効であり、だからこそ彼女は自分に叩き込んでいるのだなと、添は勝手に思っていた。

「お前も昨日やられてたよな?」
「うぐ……。痛いとこ突くな、空白。家族問題ってのは俺としては避けたいからよ、逃げましたよ、はいはい」
「踏み込んで聞くけどさ……。お前さ、自分の親の事どう思ってる?」
「別に。向こうもこっちも放任って感じだし、かといって縁がぷっつり、ってわけでもない。一般的な家庭よりは距離があるかなーっては思ってるけど、それがウチじゃ当たり前だったからよ」
「ふーん……」
「なあ、その、昨日突っ掛かってたガキの家庭って、どうだ?」