タレントアビリティ

 星空を見上げながら添は思う。能恵はきっと星なんかじゃない。星空のどんな美しささえ掻き消すショッピングモールの光のほうが、彼女を例えるには的確だろう。

「能恵さんには誰も並べない」
「じゃあ……。あの姉ちゃんはなんで、ボクなんかにいちいち構うんだよ」
「そんなの分からない。でも、あの人がそれなりに気をかけるって事は、きっと走馬に何かあるって事じゃねーの?」
「ボクに……」
「あの人はおせっかいさんだから、走馬がかわいかったんだろ。何でもかんでも勘で乗り切れるお前が、逆に可哀相だったのかもしれない。俺には分からんよ、あの人の事なんて」
「分かんないのに、なんで、兄ちゃんは……」
「分からない。でも、それでいい。俺があの人の事をどう思ってるかなんて分からない。それでいいんだ」
「……意味分かんない」

 拗ねたように下を向く走馬を、添は隣で苦笑した。肩を軽く叩いてすれ違いながら、そして添が言い残す。

「ま、親は大切にしなよ」
「あんなの、親じゃ……」
「お前の母さんに対する価値観に関して言わせてもらえば、俺は能恵さんと同意見だな。親をあれ呼ばわりするな、ガキの癖に」

 吐き捨てるように添は言って、それから夜の街へと歩いていく。振り返る事なんてしなかった。