タレントアビリティ

「親をバカにするな! 親を不要とするな軽々しく扱うな奴隷と思うな! 例え娘息子それ自身がないがしろに扱われているとしても、決して罵倒するな! 息子としての礼儀を知りなさい!」
「あんなの親じゃねーよ!」
「でもあの人はあんたを心配してる!」
「世間体のために……」
「世間体で涙が流せると思うな!」

 能恵の最後の言葉はどこと無くかすれていた。強烈な能恵の言葉のボリュームに耳鳴りを覚える添。このままだと鼓膜が破れてしまうかもしれない。
 だけど聞かなければいけない。そんな気がして仕方ないくらいに仕方なかった。この手の言葉に、耳を塞いではならない。

「大の大人が軽々しく涙を流せると思わない! あんたを思っているからこその涙よあれは!」
「何を根拠に赤の他人が言えるんだよ!」
「勘っ!!!」

 言い切った。

「親子の間柄は誰にでも見抜けるのよ……! どんな複雑な家庭環境があったとしても、決して切れない関係よ!」
「……何が、分かるんだよ」
「何も分からないわよ。……ただね」

 組んでいた手を緩める能恵。ふわりと流れた風が能恵のポニーテールを揺らした。ヘアゴムを外して続ける。さらりと揺れた。

「そうま君が、そのままであることが……。私には、許されるべき事とは思えない……」

 目を軽く擦ってからくるりと踵を返す。ずんずんと添の方へ歩いて来て「バトンタッチ!」と押し付けた能恵の瞳は、けれど確かに赤かった。

「……ゴメンギブ」
「耳が痛いですよ。で、俺は何を?」
「好きにしてやって……。私はもう、一回帰るから……」
「……お疲れ様」

 能恵の頭を数回撫でる。甘くとろけるような表情は見せなかったものの、しかしどこか落ち着いたようで。
 俯き加減に帰路を歩く能恵を見送りながら、近場にいるクソガキをどうしてやろうかと添は思う。万はどこかに行ってしまったらしい。むしろ好都合。

「よう、走馬」

 だから躊躇なんて、しなかった。