タレントアビリティ

「あるわよ」
「……ほーう」
「なかなかどうして、勘の鋭い皆様ですねぇ……。全く、どこぞやのガキを思い出すわよ」

 箸を突き付けながら能恵が笑う。万はよりシニカルに笑い返すと、ますますどろどろと話を進めていこうとした。添は無視を決め込んだ。

「それは空白の事です?」
「ちげーよ」

 1秒もたなかった。

「よく分からん中学生のガキンチョが万引きしてたのを俺と能恵さんで止めたのがきっかけだったかな」
「そうなのよね。で、そえとその中学生がハッピーマートでばったり。あらあらまあまあ大変大変。中学生は暴れました」
「そしたらそいつが棚倒壊事件を発生させちゃいまして」
「ついでに私は襲われて」
「んでもって今日も万引きの現場見ちゃって」
「あのーお二方。一から百までぺらぺらですが?」
「構わないわよ。どーせ露見することなんだし」

 能恵が丼を傾けて掻き込みながら吐き捨てた。一度殺しかけた程度でとことん嫌ってるよなと添は思う。
 それと同時に昼間に何があったのかを添は知らない、ということを思い出した。自分の知らない所で、あそこまで中学生を毛嫌いするものなのかと引っ掛かる。能恵にしては大人げない。
 背後で扉が開く「お一人様ですか」という女将の声をバックミュージックに、添は問うた。万はやっと来た注文の品に舌鼓。

「何があったんです?」
「何がよ」
「いや、だから走馬と」
「何も。だから私はフキゲンなのよ」
「何も無かったのに?」
「何も無かったからよ。いい加減私の言葉の裏を悟る能力を身につけなさいよね、そーえ」
「あー、なーるほど。はいよ、了解いたしました」
「ところでお二方」

 舌鼓連打の万が能恵と添にさらりと尋ねる。2人の反応を理解する前に、万はとめどなく言葉を連射した。

「噂をすれば影、って存じてまーすーか、っと」

 びしっ、と万が指差したのは、能恵と添の方向。2人が素っ気なく振り返ってみれば。






「あったりーっ」

 睦貴走馬が、やっぱりいた。