タレントアビリティ

「空白の言う通りですってーの。能恵さんの感覚はやたらめったらズレてるんだから、そこら辺の考慮はしてくださいって」
「アメリカ国務省の知り合いとか言われてピンとこないし、実現可能かどうかすら……」
「やれるわよ。なぁに? 今から私が英語でお呼び出しすればいいのかしら?」
「丁重にお断りいたします」
「やーねぇ。それくらい美味しいって事よ『シェフを呼べぃ!』みたいなそんな感じ」

 箸で海鮮丼を掻き込みながら微笑む能恵。幸せそうに頬張る姿は、やっぱり可愛い気がするのだ。頬にごはん粒とか。

「なんか久しぶりに平和って感じですよね」

 ついつい添はそんな事を漏らしてしまう。彼の前に並ぶ刺身定食も順当に減っていった。

「何がだよ」
「才能バリバリの能恵さんと、トラブルメーカーな俺だよ。そりゃあ色々とありましたとも」
「色々とありましたのよ」
「……ふぅん」
「今日はその小休止みたいな感じで来たんだと……、思う」
「ってことはさ、ハッピーマートが潰れたのって空白と能恵さんの影響か何かか?」

 能恵と添の箸が止まる。その様子にニヤリと歯を見せ付けた万は「やっぱしなー」と頷いた。

「まーな、あんたらが何か噛んでるとは思ったけど。ここら一帯に住んでる皆様にとっちゃあかなりの影響でございまする、ええ。お安いものものが買えなくなっちまいまして、はい」
「だってよ、そーえ」
「……申し訳ありません」
「で? それと最近、地方新聞を賑わせてる万引き事件と、何かリンクは?」
「にゃははははははーっ! なっかなか勘が強いじゃなーい、よろず君はさーっ」

 薄い胸の前で拍手しながら能恵が笑う。ひとしきり独特な笑いを響かせた後に、やや真顔になって言った。