思いの外ドアは薄かった。磨りガラスも曇りガラスも無いようで、都合よく添がいるかいないかが向こう側に悟られない。
いくら能恵であっても気付かないだろう。第六感の強い走馬は知らないが、当の本人は今荒れ狂う感情の中にいるはず。第六感なんて働かないだろうと割り切って、一層集中力を重ねた。
「あなたが、母親?」
「はい、そうですが……。一体あなたは誰ですか?」
「私はまあ、そうま君のお知り合いみたいな感じかしら。こないだカルティエちょろまかそうとしていたのが捕まったのを、助けたのは私」
「何で今それを出すんだよ!」
「ガキは黙ってなさい!」
ビクリ、と肩を震わせてしまった。能恵がいきなり声を荒らげている。やっぱり残ってよかったなと勝手に安堵。
「奥さん……。そうま君が万引きで盗ったものを質入れして、必死に生活費を稼いでいるのを存じておりますか?」
「走馬……。それ、本当?」
「カンケー無いだろ」
「……本当なのね」
「今のご判断の根拠は?」
「何と無く分かるんですよ」
「親子で、か……」
能恵が語尾を流した。ため息が増えたのかそれとも演技なのか、ただ単に考えているのかは分からない。
しかし能恵の行動は隅々にまで神経が行き渡っている。添はやっぱりそう思えた。
「勘で見透かされ合う親子関係って、息苦しいんでしょうね、奥さん。実際どうか分かりませんけど……?」
能恵が語尾を持ち上げて言葉を切った。そして何と無く添の中に嫌すぎる予感がよぎってしまう。確か能恵は、走馬ほどではないにしろ……。
勘が。
「ヤベッ!」
添は必死で足を踏み込み、大至急ドアの前から離れる事を選んだ。猛ダッシュでドアから離れスタッフオンリー地帯から抜け出し、そして息の上がったままに立ち尽くす。
外の世界は一般的な世界。裏を知らない買物客達が、思い思いにお金を使っていた。誰もお金を盗む事は無く。
しばらく立って、そしてようやく後ろを流し見る。能恵らしき人も誰もいない。あの空間からは放り出されたんだなと、つくづく添は思った。
いくら能恵であっても気付かないだろう。第六感の強い走馬は知らないが、当の本人は今荒れ狂う感情の中にいるはず。第六感なんて働かないだろうと割り切って、一層集中力を重ねた。
「あなたが、母親?」
「はい、そうですが……。一体あなたは誰ですか?」
「私はまあ、そうま君のお知り合いみたいな感じかしら。こないだカルティエちょろまかそうとしていたのが捕まったのを、助けたのは私」
「何で今それを出すんだよ!」
「ガキは黙ってなさい!」
ビクリ、と肩を震わせてしまった。能恵がいきなり声を荒らげている。やっぱり残ってよかったなと勝手に安堵。
「奥さん……。そうま君が万引きで盗ったものを質入れして、必死に生活費を稼いでいるのを存じておりますか?」
「走馬……。それ、本当?」
「カンケー無いだろ」
「……本当なのね」
「今のご判断の根拠は?」
「何と無く分かるんですよ」
「親子で、か……」
能恵が語尾を流した。ため息が増えたのかそれとも演技なのか、ただ単に考えているのかは分からない。
しかし能恵の行動は隅々にまで神経が行き渡っている。添はやっぱりそう思えた。
「勘で見透かされ合う親子関係って、息苦しいんでしょうね、奥さん。実際どうか分かりませんけど……?」
能恵が語尾を持ち上げて言葉を切った。そして何と無く添の中に嫌すぎる予感がよぎってしまう。確か能恵は、走馬ほどではないにしろ……。
勘が。
「ヤベッ!」
添は必死で足を踏み込み、大至急ドアの前から離れる事を選んだ。猛ダッシュでドアから離れスタッフオンリー地帯から抜け出し、そして息の上がったままに立ち尽くす。
外の世界は一般的な世界。裏を知らない買物客達が、思い思いにお金を使っていた。誰もお金を盗む事は無く。
しばらく立って、そしてようやく後ろを流し見る。能恵らしき人も誰もいない。あの空間からは放り出されたんだなと、つくづく添は思った。
