タレントアビリティ

 ドキュメンタリーでしか見ないようなスーパーやショッピングモールの裏の世界。どんな名前だか忘れたのだが、「店長さんと犯人さんがみっちりお話するお部屋」に、走馬と何故か添が座らされていた。
 向かいには青筋立てた宝石店のお兄さんとこの間お世話になったばかりの事務員さん。事務員さんは呆れがちに走馬に言った。

「君ねぇ……。こないだもカルティエ万引きしたでしょう?」
「……………………」
「あの時はなんかよく分からないお姉さんが買い取ってくれたからよかったものの、今回はそうはいかない値段でしょう?」
「……………………」
「何か言ったらどうだ? あと、君」
「はひっ!?」

 そしていきなり添へとばっちり。事務員さんの生暖かい目線が刺さって辛かった。巻き込まれただけなのに被害は結構なものらしい。

「弟を止めるのが兄の役割だとは思わないのか?」
「あの、すみません。弟でもなんでもないんですが……」
「言い訳は止めなさい」
「マジだって……。こいつの苗字は睦貴。俺のは空白。生徒手帳でいいですか?」
「ならいいよ。君は正直どうだっていいからね」
「なら何でここに」
「重要参考人として」
「ただの通行人だったじゃないですか……」
「お兄ちゃんと呼ばれていたからね」
「冤罪って事でよろしいですか?」

 添がガタリと立ち上がり事務室を後にしようとした。厄介なものに付き合わされたなぁと心の中でぼやいたところで、しかし添の服を掴まれる。
 流し目で見ると、当然のように走馬が掴んでいた。助けてくれよと言いたげなその瞳は、捨てられた子犬のようで。