タレントアビリティ

「だからさ……。まあ、ウザったいかもしれないけどさ、能恵さんを頼りにしたっていいじゃん」
「えー……。なんでボクがそんな事を……」
「だって走馬にもあるじゃん、才能」
「何となくが?」
「うん」
「それって才能でもなんでもないよ。ただの生れつき」
「それを才能って世間一般じゃ言うんだけどね」

 ぽつりと呟く添。走馬は添の隣で、空を見ながら続けた。

「なんてゆーかさ……。ボクはこんな才能、いらないんじゃないかなって思うよ。だって、これのせいで……。いや、元々親が望んでなかったからいいけど」
「……それが能恵さんを怒らせたんだろ? あの人はそういう事じゃあ容赦なく怒るよ」
「なんで?」
「俺がそうだから」
「似てるから?」
「似てるんじゃないよ、俺と能恵さんは」

 添も空を眺めてみた。星があるのか無いのかよく分からないけど、決して暗いとは言い切れない空。手を突き上げて掴んでみる。何も無い。

「俺はどうしようもなく、能恵さんの劣化なんだ」
「……劣化?」
「あの人も俺にそう言ったし、俺もそれは分かってる。欠落は無いけど、才能のカケラも無い俺はやっぱり、能恵さんの劣化でしかない……。って、俺は何を言ってるんだ?」

 年下に、中学生に何をぽやぽやと語っているんだろうか。添は溜め息1つ立ち上がり、走馬を見下ろして告げた。

「とにかくさ。自分は生きてる価値無い、みたいな事は言わないでほしい」
「自分の事をどう捉えたってそれは自分の勝手でしょ」
「そうかもしれないけどさ……。まあ、走馬が俺を赤の他人でしかないって見なすんならそれでいいし、俺の言葉に何かしら感じるのならそれはありがたいし……。うーん、まあいいや。もういいや」

 マウンテンバイクにまたがって添は言う。走馬はよく分からない風に首を傾けていたが、やがて「変な人」とだけ言った。ペダルに足を乗せて踏み込む。さよなら1つ言わずに、添は走馬を見捨てた。