タレントアビリティ

 曲がり角の度に直感的に曲がる。十字路ならば直進という選択肢も追加されて3つ。何となく何となく進み、勘のままに進み、しばらく添は進んだ。
 夏の夜は蒸し暑い。そういえばまだ制服を着ていた。しかし夏服は夏場を乗り切るための構造だから問題無い。ただ、ペダルを漕ぎ進めていくばかり。

「あっつ……」

 随分離れた場所に来た。アパートからかなりの距離に添はマウンテンバイクで訪れている。帰り道は知っているけど帰る気はしない。あいつに出会うまでは、帰れない。

 ……無謀過ぎた、ろうか。
 ふと添は、そんな風に思った。一度不安がよぎるとそれは離れないものであるのだが、しかし添は思ってしまった。

「無茶苦茶過ぎか、こりゃ」

 それはそうだった。
 添には才能が無い。それを1番分かっているのは添自身だというのに、当たりか外れかすら分からない勘を頼りにここまで来て、そして立ち止まる。無茶苦茶以外の何でもない。

「はーっ。星が、綺麗ですねぇ……」

 空を見上げると星空が綺麗。たいして都会ではないこの場所は、一等星や二等星までなら見える程度に綺麗な星空。
 能恵に電話しようかとは思った。しかしまあ、これは個人的な理由での家出みたいなもの。電話なんて出来るはずが……。

「……あ」

 いた。
 お目当ての人物がコンビニのおにぎりをかじりながら、近くの公園にいる。間違いない。

「ラッキィ!」

 勘も捨てたもんじゃないなと、半分呆れながら添はマウンテンバイクに跨がる。公園までの距離は、無いに等しかった。