タレントアビリティ

「……なんで、いるの?」

 能恵のそんな声が静寂を破ったのは、それからしばらくした後だった。ちゃぶ台の破片を集めて捨てて、真っ二つになったちゃぶ台をゴミ捨て場に供養して、そして帰って来た頃だ。
 それまで微動だにしなかった能恵が、初めて口を開く。がさがさとした声だった。

「帰って来ないでって、私、そえに言ったよ?」
「言いましたね」
「午後9時まで遠くで過ごしてって、言ったよ?」
「言いましたね」
「何でもないって、言ったよ?」
「言いましたね」

 能恵は俯いたままだった。何かが抜けてしまったような、酷く疲れ切ったような少女。年上とは思えないいつもの切れ味はどこ吹く風、見た目そのままの姿で、畳を見るだけ。