そう言ってあおいが飲みかけのジュースのボトルを差し出す。
「おいしいっ」
「でしょ?」
で、でも何で?
どこかチクチク刺さる視線を感じながら聞いてみると
「ナイショ!」
――ま、そのうち分かるって。
「……」
「……」
少し遠くに座るふたりに見せ付けるようにして
私に耳打ちをするあおいに、もっと訳が分からなくなってきてしまった。
「おじさん、こんにちは!」
「久しぶり、あおいちゃん。彼氏くんも」
「お世話になります」
落ち着いたふたりとは裏腹
「「よっ、よろしくお願いしますっ!」」
なぜかソワソワする私たち。
だ、……だって……!
「いいのかな、凜久……」
「う、うん……予想以上。すごく高そうだけど……」
あおい達がおじさんと楽しそうに話している裏で、ヒソヒソ話す。
目の前にそびえ立つのは、和風の旅館。
周りには木が多い茂っていて、それがまた建物を主張させていた。
「この近くにはね、穴場の桜スポットがあるんだ」
――夜には、ライトアップされててね。とても綺麗なんだよ。
おじさんの言葉を聞いて、パアッと顔をほころばせる凜久。
「瑠璃、絶対夜行こうっ!」
「うん……!」
「はいはいっ、そこ!部屋行くよ~」
みんなに促されて、私たちも続いた。

