現場に着くまで俺たちは終始無言だった。

その理由は二人とも分かっていた──。


現在の時刻。
午後八時二十分。

「このあたりね」

先に口を開いたのは彼女の方だった。
下を見ると千里通りが見える。相変わらず、交通量が多い道だ。俺の家も茜の家もこの道の先にある。
因みに言っておくが、俺が今回一人暮らしを始めようと思ったのは、家から追い出されたと言っても過言ではない。
まぁ、親の立場からすれば二十歳になった息子が職にも就かずふらふらしているんだから……追い出されるのは当然だ。
もちろん、茜にも別れは告げてきたケド……。


「そろそろだな」

二十四分。

「ターゲットと発見!翔ちゃん、行くよ」

彼女は強引に俺の腕を引っ張った。

「……茜」

分かっているのに何もできない自分が悔しくて、

悔しくて──。


やっぱり、俺は、


俺は、


茜を助けなきゃ


いけないんだ!!