「ふ〜ん、そんなことがあったんだ」

「だから、あの時の俺と同じ立場にある茜を、今度は俺が助けたいんだ、いや、助けなきゃいけないんだ」

恩返し……?
もはや、それだけではないかもしれない。

「霊界ではね、未来を変えてはならないという決まりがあるの。それと同時に変えた者には重罪が課される」

「……重罪」

「私たちは自動的に未来を知ってしまう権利がある。しかしそれを操ることは許されないのよ!例えどんな理由であろうとも……ね」

彼女はとても冷静だった。そして淡々と語られた言葉。
俺は反論余地を失っていた。

「……力になれなくてごめんね」

紗世はそう最後に一言加えた。俺のせいで彼女を苦しめているということが伝わったからこそ、それ以上何も言えなかった。



現在の時刻。
午後八時──。

「とりあえず現場に行くわよ!」

「……ああ」

俺たちは霊。(というより俺の場合は霊体にさせられたともいう)
普通の人間には姿は見えない。こういう状態では空を飛ぶことなど簡単なことなのだ。
歩くよりは楽だったりはする。