手のひらの終焉

「本当なら、オレは、あんたとなど口もきくことがないくらいの、

組織の下っ端だ。こんなことがなければ、だが」

「あたしのこと助けても、何にも得はないよ」

「そうか?このまま突き出せば、出世できるかも」

「そうか。その手があった」

男は、ふっと笑う。

「うそだ。オレはあんたが治ったら、自分はここで死んだことにして、

家族のところへ帰ろうと思っている」

「突き出さないの?」

「意味がない。あんたはどうするんだ?グループに戻るのか?」