~Snow White~『ニ巻』

稔に会いに行った。


ホテルの一室に来るように言われた。

ホテルという場所に全てがあった。


「待ってたよ。」

この爽やかな笑顔のどこに
悪魔が住んでるんだろう。


利香は黙ってその手に引かれた。


「お金を貸してくれるって……」


「こうして一緒にいてくれるなら」
稔の唇が首筋を這う。


「不幸ね、あなたって。
そうしたのは私?」



「そうだな、おまえに会わなかったら
こんなことはしてないだろ。
家族に囲まれて、けっこうアウトドア派の
父親になって、息子が少し大きくなれば
一緒に昔旅したところに
連れて回って・・・・・・・
そんな普通の男だったろうな。」



「兄と妹でいたかった。
あなたが兄でいてくれたら
もっともっとあなたを愛していられた。」



「兄として他の男に
とられるのを祝福できるほど
人間できてないからな。」



利香の体に触れる手は
愛おしげだったが


利香にとっては身の毛もよだつ
耐えがたい時間だった。


ベットに押し倒された瞬間
灰皿に目がいった。