夏絵は竜平の首に手をまわした。


「おまえ、ご飯たべてんのか?
軽すぎだよ。」


ふわっと抱き上げた瞬間だった。


向こう側の利香と目があった。


 利香・・・・・


利香は信じられないという顔をして立っていた。


時間が一瞬止まった。


「痛い・・・・。」
夏絵が足首をおさえた。


竜平は利香から目をそらした。
「大丈夫か?」


「ひねっちゃった・・・」



「バカだな。
靴買いに行こう。」


「かっこ悪い・・・・・」
夏絵は竜平に抱きついた。



いつの間にか
利香の姿が見えなくなっていた。


 幻か?


当たりを探すと利香の後ろ姿を見つけた。
少し前を体のがっちりした
コートの男が利香を振り返っていた。


優しい笑顔で利香に何か話かけていた。


こちらからは利香の表情を見ることは
できなかったが、
その男の笑顔に胸騒ぎを覚えた。

お互いに見られてはいけないものを
見られてしまった

そんな後味の悪い夜になった。