ちょうどその頃、校門の前で一人の男が女子生徒に声をかけていた。 ジーンズに黒いセーター。黒いニット帽を深々とかぶって、表情はうかがい知れない。 「君、何年生?城山マイって子、知らないかな?」 声をかけられた生徒はキョロキョロとあたりを見渡した。 「城山さんなら、さっき帰って… あ。あの子です」 そう指差した先には、ランドセルを背負って歩いて行く城山マイの後ろ姿が。 「あの子が…」 ニット帽の奥の目が、その後ろ姿をじいっと見つめた。