シャレンは言葉も発せずに、ただ伏せ目がちに微笑んだ。
「それでバークさん。この子はいくらなのですか?」
奴隷商人にいいながら、決してその藤色の瞳は私から離れない。
「はっ!ノグラース伯爵様!
この娘は、500セルです」
500セル
決して少ないお金じゃない。
でもこれは売られる女奴隷の中では、最も少ないであろうと思われる。
「500セル…?たったの?」
レイシアの口から驚きの声が漏れた。
確かに、伯爵様となれば500セルなんてほんのはした金。
「愚者、ですね」
レイシアが奴隷商人のバークに聴こえない声でそう呟いた。
思いもよらない言葉が聴こえたシャレンは目を微かに開いた。
愚者。
それは明らかにバークに言った言葉。
この男、レイシア・ライル・ノグラースは一体何を考えているの…?
何故、愚者と言ったのか。
その意図はまるで読めない。

