ギィー、と扉が鈍い音を発てる。

扉の隙間から光が漏れた。









「君が、シャレン?」



春風のような柔らかい声が、扉の向こうから聴こえた。


シャレンはその声に導かれるように、伏せていた顔を上げた。



予想外の出来事に、大きく心臓が波打つ。


レイシア・ノグラース。

その人物は、あの名家のノグラース家の主というのだから、シャレンはてっきり年のいった人だと思っていた。



だが、実際は大きく異なっていた。



レイシア・ノグラースは、年は25前後という所。

身に纏う服は、全て貴族クラスの上質な生地で出来ている。
衣服の服飾も、派手にならない程度の趣味の良い物を付けている。



そして―――



「僕はレイシア・ライル・ノグラース。
よろしくね」



金の髪と、少したれ気味の藤色の瞳。
薄い唇。通った鼻。


着ている服がなければ分からない程、中性的な綺麗な顔立ちをしていた。