「さぁ、シャレン。着替えてきて」
考え混んでいると、突如明るい声でレイシアさんが言った。
「さっきは乱暴してごめんね。許してとは言わないけど、本当に反省してる」
「……はい」
小さく呟くと、レイシアさんの手が私の黒く忌まわしい髪を撫でた。
その動作が本当に優しくて、まるで繊細なガラスに触れるみたいだった。
「どうして、」
あまりにも不可解で理解ができず、気がついたら口が先走っていた。
「どうして、私を買ったのですか?」
死神を呼び寄せる漆黒。
災難最悪の象徴とも厭われる色。
「シャレンは、篭の鳥ではなくて自由を持つ鳥だから」
「……?」
「――君は幸せにならなければいけない」
最後に紡がれた言葉はひどく易しく、哀しかった。
宿命づいたその言葉は、どう考えても私からは程遠いモノであり、願うことも赦されないモノの気がする。
(きっと……)
私は幸せに対して、戒めを抱えている。
………ただ、そんな気がした。

