「ただの気まぐれ。俺の家行こう」
女の人を立たせた先輩は
あたしの横を通り過ぎた。
振り返ったあたしは
先輩の背中に向かって叫ぶ。
「『未央ちゃんも星条においでよ』
って言ってくれたのは!?」
先輩がそう言ってくれたからあたし…。
足を止めた先輩は
女の人を残してあたしの方に歩いてきた。
「…そんなこと言った?
覚えてないなー…けど…」
顔を近づけてにやっと笑った。
「それで星条に来たんなら…
未央ちゃんってストーカーだね?
はっきり言って、気持ち悪いよ」
鼻で笑った先輩は
そのまま女の人と歩いていった。
“未央ちゃんのピアノ、好きだな”
“もっと聞かせてよ”
“未央ちゃんも星条においでよ。
待ってるから”
優しい植野先輩。
“可愛くなったよね、未央ちゃん”
あれも…嘘…。
“私服姿ってなんか新鮮だな…”
全部…嘘…。



