君に染まる(前編)



獅堂先輩に背中をぽんっと叩かれ
少し前に動いたあたしの体。



そのまま棒立ちのあたし。



顔もあげられない。



「…どうしてですか?」



気付いたら、
無意識のうちに口が動いていた。



「先輩はこんな人じゃ…」



「何を知ってるの?」



冷たい声。



「未央ちゃんは、
俺の何を知ってるの?」



ゆっくり顔をあげると、
見たことの無い冷たい表情の先輩と
目が合った。



「なんでここにいるか知らないけどさ、
邪魔しないでくれる?」



「…邪魔だとさ、ほら行くぞ」



そう言って
あたしの腕を掴んだ獅堂先輩の手を
振り払った。



「昨日、
どうしてあたしとデートしたんですか?」



「デート?あれデートだったの?」



緩んでたネクタイを締めなおし、
服装を整えだした植野先輩。



「じゃあ…キスは…」