君に染まる(前編)



「悪い、遅れて」



「大丈夫だよ」



先輩の腕に自分の腕を絡めた女の人は
倉庫の中に先輩を引っ張った。



目の前の光景になのか…
植野先輩に裏の顔があることに
確信を持ったことになのか…。



分からないけど、胸がずきずきと痛い。



「だから言ったろ」



体が動かず呆然とするあたしに
いつのまにか並んで立っていた獅堂先輩が
冷たい言葉をかける。



すると、突然あたしの腕を掴み、
倉庫にあたしを引っ張っていく。



「何するんですかっ…」



抵抗するあたしの腕を離さず
倉庫にどんどん近づいた先輩は、



ガラッ



勢いよく倉庫の扉を開けた。



倉庫の中では
植野先輩と女の人がキスをしていた。



扉が開かれると驚いてこっちを向いた。



「な、なに?」



慌てて植野先輩から離れた女の人。



反対に落ち着いた様子の植野先輩。



「これで分かったろ、こいつの本性」