君に染まる(前編)



…あれ?今確かに獅堂先輩の声が…。



「どこ見てんだバカ」



上から声が聞こえていることに気付いて
顔をあげると、
獅堂先輩がVIPルームの窓から
あたしを見下ろしていた。



「遅えんだよ、早く中入れ」



「あ…」



戸惑いながら
講堂の裏の方へ視線をうつした。



植野先輩…。



「何やってんだよ、さっさと…」



「ごめんなさい!!」



勢いよく頭を下げ、
講堂の裏へ足を向けた。



「おい!!!」



先輩の声を背中に感じながらも
振り返らず植野先輩を追いかける。



植野先輩は今朝と同じように
裏庭の奥へと進んでいく。



先輩が足を止めた場所は…あの倉庫。



扉を開けると、
今朝と同じように女の人が出てきた。



けど、今朝とは違う人…。



すごく真面目そうで、
リボンの色は見えないけど
制服のデザインを見る限り
Ⅱ類の人だということは分かる。