君に染まる(前編)



…楓ちゃんって、
優しいのか優しくないのか
よく分かんないや。



ため息をつきVIPルームに向かう。



部活で活気づいてるグラウンドの
すぐ近くにある講堂。



その横のVIPルームに着くと
またため息が出た。



楓ちゃんの言ってた通り、
こんなんじゃ許してもらえないかも…。



手に持っているパンを見つめて
だんだん弱気になってきた。



今度こそ本当に襲われたらどうしよう…。



そう考えるだけで背筋が凍る。



ぶるっと震える体をさすり、
ゆっくりとドアに手をかけた時、



「今から行くから、待ってて」



聞き覚えのある声。



声のする方を見ると
携帯を耳に当てて講堂の裏の方へ向かう
植野先輩の姿。



今朝見た光景がよみがえってくる。



まさか…また女の人と?



ドアに触れていた手を引っ込めた。



「おいこら」



植野先輩の背中を見つめていたあたしは
嫌な声に周りを見渡す。