…楓ちゃんって、
優しいのか優しくないのか
よく分かんないや。
ため息をつきVIPルームに向かう。
部活で活気づいてるグラウンドの
すぐ近くにある講堂。
その横のVIPルームに着くと
またため息が出た。
楓ちゃんの言ってた通り、
こんなんじゃ許してもらえないかも…。
手に持っているパンを見つめて
だんだん弱気になってきた。
今度こそ本当に襲われたらどうしよう…。
そう考えるだけで背筋が凍る。
ぶるっと震える体をさすり、
ゆっくりとドアに手をかけた時、
「今から行くから、待ってて」
聞き覚えのある声。
声のする方を見ると
携帯を耳に当てて講堂の裏の方へ向かう
植野先輩の姿。
今朝見た光景がよみがえってくる。
まさか…また女の人と?
ドアに触れていた手を引っ込めた。
「おいこら」
植野先輩の背中を見つめていたあたしは
嫌な声に周りを見渡す。



