「ビッ…そう呼ばれてるらしいな。
まあ、そこに来い」
そう言った先輩はあたしに背を向けた。
非常階段を降りながら、
「来なかったらどうなるか知らねえぞ」
恐ろしい言葉を残して。
「で…お詫びって、それ?」
下駄箱から靴を出しながら
あたしの手に握られている売店のパンを
見つめる楓ちゃん。
「そんなので許してもらえるとは
思えないけど?」
「でも…あたしが出来るお詫びって
これくらいしか…」
「VIPルームに来いって言われたなら
お詫びはあれしかないでしょ」
「あれ…って?」
「あれはあれ。じゃああたし先帰るね」
「え、待っててくれないの?
パン渡したらすぐ帰れるのに…」
「あたしバイトあるし…
それに、あの獅堂先輩が
そんなので納得して
すぐ帰してくれるとは思えないし。
じゃあね未央」
振り返らずに手をふる楓ちゃんの背中を
呆然と見つめる。



