「詳しいことは私にも…
失礼ですが、
坊ちゃんとケンカでもなさいましたか?」
「ケンカ…」
もしかして、さっきのこと…
ものすごく怒ってる?
「…何があったかは存知ませんが、
坊ちゃんの許可無しでは
中に通すことは出来ませんので、
今日のところは
お帰りになった方がよろしいかと・・・」
…帰る?
先輩に誤解されたままで帰るの?
「先ほどお送りするよう
坊ちゃんから頼まれましたので、
どうぞお乗りください」
畠山さんが車のドアを開ける。
だけどあたしは、
車に乗りこもうとはせず
ただ開けられたドアをじっと見つめた。
先輩の誕生日なのに…
先輩に喜んで欲しくて
曲だって作ったのに…。
このまま帰るなんて嫌だ。
「…帰りません」
「え?」
「あたし、帰りません!
先輩が会ってくれるまで
ここで待ってます!!」
そう叫び、門の近くにしゃがみこんだ。
「い、いけません百瀬様!
私が坊ちゃんに叱られます!」
「いいんです!放っといてください!」



