君に染まる(前編)



決まりってなんだろう…。



そう思いながら言われた通り待ってると、
電話が繋がったのか
畠山さんの背筋がピンと伸びた。



「もしもし、坊っちゃん?」



え…先輩?



「百瀬様がお見えになってますので
お通しいたしますよ」



もしかして決まりって…
家に入れていいかの確認のことなのかな?



"確認"と言うよりは"報告"といった感じの
畠山さんの口調を聞きながら
そう考えていると、
急に畠山さんの顔が曇った。



「…は?坊っちゃん、今なんと?」



あきらかに動揺した様子の畠山さんが
あたしをチラッと見る。



…どうしたんだろう?



首をかしげて畠山さんを見つめ返す。



「ですが坊ちゃん、百瀬様は…
坊ちゃん?坊ちゃん!?」



電話を切られたのか…
携帯に呼びかけていた畠山さんは
耳からゆっくり携帯を離すと、
ため息をつきながら再びあたしを見た。



「…申し訳ありません、百瀬様。
坊ちゃんが、会いたくないと…」



「え?」



会いたくないって…。



「…どういうことですか?」