そう思った時。
「百瀬様?」
聞き覚えのある声に振り向くと、
車の中からあたしを見つめる
畠山さんがいた。
「どうされました?こんなところで」
「あ、あの…
先輩に会いに来たんですけど
チャイムがどこにあるか分からなくて…」
「ああ、そうでしたか」
そう言うと、
車から降りて機械の前に立った畠山さん。
慣れた手つきで数字を入力していき、
取り出したカードを溝に通す。
「ここは関係者専用の入り口なんです。
だから、チャイムは無いんですよ」
「あ、そうなんですか」
「まあ、前にいらっしゃった時は
坊ちゃんが一緒だったので
間違えても無理ないですね」
畠山さんの話を聞いている間にも
大きな門はゆっくりと開いていく。
「では、お乗りください。
中までお送りいたします…
っと、その前に…」
あたしを車内へうながしていた畠山さんは
携帯を取り出した。
「一応決まりなので…
少々お待ちください」
そう言いながら微笑むと、
どこかに電話をかけだした。



