君に染まる(前編)



「…行かないの?」



「え?」



「彼のとこ。
このままだと彼、誤解したままだよ?」



そうだ…キスなんてしてないって…
誤解だ、って話さないと。



「すみません、あたし行ってきます!」



床に置いていたかばんを手にし、
みんなの声など聞かずお店を出た。










お店を出てから数分後。



先輩は電話をしても出てくれず、
メールを送っても返事は無くて…。



困り果てたあたしは
とりあえず先輩の家にやって来た。



でも…どうやって入れば…。



見上げるほどの大きな門には
普通ならあるはずのチャイムは無く、
かわりにあるのは
カードを通すような溝や
数字を入力するようなものがついている
機械だけ。



どうしよう…
きっと決められた番号とかが
あるんだろうけどそんなの知らないし、
カードなんて持ってないし…。



なにより、
下手に触ってセキュリティとかが働いたら
まずいもんね…。



とりあえず、もう1回先輩に電話を…。