君に染まる(前編)



だ…だめ!!



心の中でそう叫んだあたしは、
堀河さんをかばうように体をずらした。



目の前に迫ってくる先輩の拳。



反射的に目をつぶった瞬間、
頭に拳がコツンと当たった。



あ…。



とっさにスピードを緩めてくれたのか
それほど痛くは無かったけど、
全身の力が一気に抜けた。



へなへなとその場に座りこんだあたしに
先輩が口を開いた。



「…なんでかばうんだよ」



声を出すことが出来ず、
無言のままゆっくりと顔を上げる。



え…。



顔を上げたあたしの目に映ったのは
想像もしてなかった先輩の表情。



なんで…そんな顔して…。



「先輩…」



「もういい」



立ち上がったあたしから顔をそらす。



「まじうぜぇ…なんなんだよお前…」



「え…」



「なんで俺ばっかり…」