君に染まる(前編)



あたしを呼ぶ低い声。



おそるおそる顔を上げると、
鋭い視線とぶつかった。



「誰だコイツ」



「…え」



「コイツは誰だって聞いてんだよ」



…なんで先輩怒ってるの?



そんなことが頭の中を駆け巡り
質問に答えられないでいると、
先輩は堀河さんに視線をうつした。



「お前、俺の女に何してんだよ」



「え…何って…何?」



「とぼけんな!!
未央にキスしてただろ!!!」



店内に響いた先輩の声。



…………。



「「え?」」



ピッタリとそろった
あたしと堀河さんの声に
先輩の機嫌はますます悪くなる。



「…俺の女に手ぇ出すなんていい度胸だ。
覚悟は出来てんだろうな」



「やっ…ちょっと待って…
ってか、君、未央ちゃんの彼氏?」



「ぐだぐだうるせぇんだよっ!!」



先輩が勢いよく拳を振り上げる。