君に染まる(前編)



そして、
鍵盤に手を乗せてピアノを鳴らす。



……………。



…ん?



少し弾いたところで手を止めた。



なんか、音が変…?



顔をしかめて首をかしげていると、
隣に立っていた堀河さんが
くすくすと笑いだした。



「やっぱ気付いた?
ってか、気付かないわけないよね」



「あの、これ…」



「見た目はキレイなんだけどね。
不良品らしいんだ」



あ、やっぱり…。



苦笑いを浮かべながら鍵盤を押さえる。



「来週修理してもらう予定なんだけど、
この分じゃただのインテリアだよね。
まあ、この店ムダに広いから
それもそれでいいかもしれないけど」



「うーん…確かに音は変ですけど…
これってちゃんと調律すれば
治るんじゃないですか?」



「え?でも不良品って言われたけど」



「いや、たぶん調律すれば…」



ピアノのふたを開けて中を覗きこむ。



あたしに続いて
堀河さんもピアノの状態を確かめた。