ファイルに楽譜をしまいながら
入り口の横に置かれている
キレイなグランドピアノに視線をうつす。
「あ、そうそう。今日搬入されたんだ。
今までオルガンだったから
いい感じになったでしょ?」
「いい感じはいい感じですけど、
ぱっと見CDショップには
見えませんでしたよ?」
そう言ったあたしは、
お店に入る前を思い出した。
今まで外から見えていた店内は
入り口の横にある小さなステージに
オルガンが置いてあったんだけど、
今日は違ってピアノが置いてあった。
搬入された理由が
インテリアとしてなのか
演奏する為なのかは分からないけど…。
「なんだか、楽器店みたいでした」
そう言って笑うと、
堀川さんもつられて笑う。
「言われてみればそーだよなあ。
まあ、店長の希望だから」
「店長?
あー…前からお店にピアノ飾りたいって
言ってましったっけ」
「うん、理由はよく分かんないけどね。
あ、そうだ、ちょっと弾いてみない?」
「え…いいんですか?」
「うん。俺もさっき弾いたし」
「…じゃあ…ちょっとだけ」
持っていたかばんを床に置いて
ピアノの前に座った。



