「あ、今から取りに行きますよ」
『あ、そう?なんかごめん。
じゃあ、気を付けておいで』
「はい。それじゃあ、後で」
携帯を切り、簡単に身支度を済ませる。
「ん?どっか行くの?」
「ちょっとピアノ教室に…
楽譜忘れてたみたいだから取ってくる。
すぐ戻るから」
「じゃあ、買い物は帰ってきてからね」
笑顔でそう言う楓ちゃんに、
「行きません!」
しかめっ面を向けて部屋を出た。
「はい、これ」
目の前に差し出された楽譜を受け取り
ホッと胸を撫でおろす。
「楽譜無くしてたことに
気付いて無かったんで助かりました。
ありがとうございます」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
わざとそんな言い方をする堀河さんに
思わず笑顔を浮かべる。
「あ、それより…
さっき言ってた手が離せないって、
もしかしてこれのことですか?」



