君に染まる(前編)



良かった…もう怒ってないみたい…。



「あ…でもどうして学校に?
帰ってきたばかりで
疲れてるんじゃないですか?」



「どうしてって…
お前を迎えに来たんだよ」



「…迎え?」



意味が分からずそう聞き返すと、
先輩はあたしの首に腕を回して
おでことおでこをくっつけた。



「俺は、待ったからな」



「え…」



「もう待てねえから」



その言葉に、至近距離の真剣な瞳に、
心臓がどくんと鼓動する。



それと同時に、
周りからの痛い視線に気付いて
慌てて先輩から離れた。



「今日はあたし楓ちゃんと約束があって…
ね?楓ちゃ…」



って…あれ?



救いを求めて振り返った先に
楓ちゃんの姿がない。



「楓なら俺に頭下げてどっか行ったぞ」



「え!?」



そんな……どうしよう…。



「………今日はピアノのレッスンが」