そう言いかけたところで
楓ちゃんが口を噤んだ。
不思議に思い「どうしたの?」と
聞こうとした瞬間、
「きゃ!」
誰かに後ろから抱きしめられた。
え?え?な、何?っていうか…誰!?
突然のことでパニックになっていると、
耳元で響いた低い声。
「ただいま」
……え?
聞き覚えのある声に振り返ると、
笑顔であたしを見下ろす獅堂先輩がいた。
「……し、獅堂先輩?」
「久しぶり、未央」
そう言った先輩は
驚くあたしをもう一度抱きしめるた。
「え、あ、先輩、帰ってたんですか?」
「ついさっきな。
んで、空港から直接ここに来た」
直接って…確かに私服だけど…。
「帰ってくるならそう言ってくれれば…」
「悪い。未央の驚く顔が見たくてさ」
意地悪く笑う先輩に少しホッとした。



