君に染まる(前編)



「お待たせー…って、何やってんの?」



飲み物を買いに行っていた楓ちゃんが
あたしの側に駆け寄ってきた。



「ん?…ああ、明日だっけ?
獅堂先輩の誕生日」



スケジュール帳を覗きこむ楓ちゃんに
小さくうなずく。



「あれ以来連絡してこないなんて…
獅堂先輩何考えてんだか」



「きっと忙しいんだよ」



「もう…未央は物分かり良すぎ!
もっとわがままになりなよ」



わがままって言われても…。



返事に困りなんとなく苦笑いを浮かべ、
楓ちゃんと一緒に校舎から出た。



そのまま正門に向かおうとすると、
あたしとは反対に向かう
楓ちゃんに気付き足を止めた。



「楓ちゃん?門こっちだけど」



そう呼びかけると、
楓ちゃんも気が付き振り返る。



「ん?…あれ?未央帰るの?」



「え?帰らないの?」



「だって、VIPルーム行くでしょ?」



VIPルームって…。



「今日も行くの!?」



「昨日はバイトで行けなかったもん」