君に染まる(前編)



「ほ、堀河さん…」



からかうように笑う堀河さんに
あたしは肩をすくめた。



「冗談だよ。
吏雄に言ったりしないから安心して。
それより、困ってること無い?
作曲で分かんないこととかあったら
手伝うよ?」



「いいですよ、申し訳ないですし」



「でも未央ちゃん、
1人で作曲したの1回だけでしょ?
ピアノの腕は負けるけど
作曲では吏雄より俺の方が…」



「いや、そういう問題じゃなくて…
せっかくプレゼントするんだから
自分の力だけで完成させたいなって…」



あたしの言葉を聞くと
堀河さんはハッとした。



「あ…そっか、そうだよね…
余計なこと言ってごめん」



「いえ、気持ちだけでも嬉しいです」



「あ、でも、
質問とかあったら本当になんでも言って?
なんっでも協力するから。
未央ちゃんの恋、応援したいし」



「あ…ありがとうございます」



堀河さんの言葉に自然と笑みがこぼれた。










毎日ピアノに向かっていた
夏休みも終わり、
2学期に入って2週間。



学園内に獅堂先輩の姿はまだ無い。