急速に高鳴る鼓動を我慢しながら
先輩のキスを受けとめていると、
首筋にひんやりとした感触を感じた。
その直後に唇は離れていき、
あたしを見つめる先輩は
口元をゆるめて小さく笑う。
「似合ってんじゃん」
そう言って、
胸元に触れる先輩の手を追うように
視線を下げた。
「え…」
…ネックレス?
あたしの胸元で揺れている
十字架のネックレス。
「先輩、これ…」
「やる」
「や、やるって言われても…」
「俺がやるっつってんだから、
黙って貰っとけ」
「でも、悪いですし…」
そう言って、ネックレスに視線を戻した。
あれ?十字架と一緒に何かついてる…
アルファベットの"S"?
チェーンと十字架を繋ぐ部分に、
小さな"S"の文字がぶら下がっている。
…どうして"S"?
首をかしげるあたしに、
まるで頭の中を読んだかのように
先輩が口を開いた。



