「え?……あ」
先輩にそう言われ、
いつのまにか震えが止まっていることに
気がついた。
全然、怖くない…。
「ま、ガキの頃のトラウマなんて
しょせんそんなもんだ」
そう言うと、
先輩はあたしの肩にあごを乗せた。
「まじですげぇな…」
「そ、そうですね…」
目の前の景色に
口元をほころばせる先輩に、
あたしはぎこちなくうなずいた。
ち、近い…。
先輩が呼吸するたびに息が耳にかかる。
こんなに密着した状態だと
心臓の音が聞こえちゃいそう…。
景色を楽しむ余裕が
なくなってしまったあたしは、
ただただ前を向いていた。
「未央」
突然名前を呼ばれびくっと反応した瞬間、
体を反転させられた。
そのまま唇が重なる。
「…せんぱ……っ…」
反射的に体を押し返すけど、
あっさり阻止されてしまった。



