「大丈夫。俺がいるんだから心配ねぇよ」
そう言う先輩の声は
おもしろがってるように聞こえる。
そんなことをしてるうちに
先輩は階段を上りきり、
係員の人の声が聞こえてきた。
「カップルさんですか?仲がいいですね」
からかうように笑う女の人の声は
ゴンドラのドアを開ける音と重なる。
「足元にお気を付けください」
「どうも」
先輩がお礼を言ったと同時に
体が少し揺れたのが分かった。
「やっ…」
とっさに先輩にしがみつく。
「ずいぶん大胆だな」
「だ、だって、今揺れて…」
「ぶら下がってんだから当たり前だろ」
そう言うと、先輩はあたしを下ろした。
足がついても先輩にしがみつくあたし。
そのせいで、さっきのカフェ同様、
同じイスに一緒に座る形になった。
「ったく…どこがそんなに怖いんだよ。
思ってたほど大したことねぇじゃねぇか」
「せ、先輩…観覧車初めてなんですか?」



