「それから1回も乗ってねぇの?」
「いや…小学校低学年の時に1回だけ…
結局乗れませんでしたけど…」
未だに後ずさりながらそう言うと、
先輩は頭をかきながら呟いた。
「小学生…そっかそっか」
そして、あたしの顔を見て微笑む。
どこか意味深な笑みに
嫌な予感がした瞬間、
「!?」
先輩があたしの体を抱え上げた。
「先輩!?」
驚くあたしにかまわず
階段を上がっていく先輩。
観覧車は思ったよりすいていて、
いつもは行列が出来るこの階段も
今ではただ上がるだけ。
それでも周りには何人か人がいて、
先輩にお姫様抱っこされているあたしは
周りの目を気にするはずなんだけど…。
観覧車に近づいていることに焦って
それどころじゃなくなった。
「お、下ろしてください!」
「最後に乗ってからずいぶん経つんだろ?
もう乗れるって」
「む、無理ですよぉ…」
近づく観覧車に恐怖心が増し、
目をつぶって先輩の胸に顔をうずめた。



