「見てみてぇな、
未央が焦りながらゴンドラ乗るところ」
「笑いごとじゃないです…」
「まあ、心配すんな。
俺が手貸せばさすがに乗れるだろ」
先輩がそう言った時、
ちょうど観覧車乗り場に到着した。
「あ、でも…」
そのまま階段を上がっていく先輩に
逆らうように、
あたしは足を踏ん張った。
あたしに手を引っ張られ
一瞬前のめりになった先輩は、
驚いて振り返る。
「大丈夫だって、手貸してやるから」
後ずさりながら顔を振るあたしを
小さな子供のようにあやす先輩。
「こ、怖いんです、観覧車!」
「怖い?」
「初めて観覧車に乗った時…
乗る時はお兄ちゃんに手伝ってもらって
なんとか乗れたんですけど、
降りる時に派手に転んだらしくて、
それがトラウマになって
体が勝手に拒否反応を…」
今だって、
観覧車に近づくたびに鳥肌が立ってる。
変な汗もかいてきたし、
足もだんだん震えてきた。
「…初めて乗ったのっていつだよ」
「え?あ…幼稚園の頃ですけど…」



