君に染まる(前編)



「見てみてぇな、
未央が焦りながらゴンドラ乗るところ」



「笑いごとじゃないです…」



「まあ、心配すんな。
俺が手貸せばさすがに乗れるだろ」



先輩がそう言った時、
ちょうど観覧車乗り場に到着した。



「あ、でも…」



そのまま階段を上がっていく先輩に
逆らうように、
あたしは足を踏ん張った。



あたしに手を引っ張られ
一瞬前のめりになった先輩は、
驚いて振り返る。



「大丈夫だって、手貸してやるから」



後ずさりながら顔を振るあたしを
小さな子供のようにあやす先輩。



「こ、怖いんです、観覧車!」



「怖い?」



「初めて観覧車に乗った時…
乗る時はお兄ちゃんに手伝ってもらって
なんとか乗れたんですけど、
降りる時に派手に転んだらしくて、
それがトラウマになって
体が勝手に拒否反応を…」



今だって、
観覧車に近づくたびに鳥肌が立ってる。



変な汗もかいてきたし、
足もだんだん震えてきた。



「…初めて乗ったのっていつだよ」



「え?あ…幼稚園の頃ですけど…」