「…違うんですか?」
そう聞き返すと、
先輩はさっきよりも大きなため息をついて
立ち上がった。
そして、あたしの腕を掴んだまま
携帯を開いて歩き出す。
「ど、どこ行くんですか?」
「門限に間に合うように帰してやるから、
それまで俺に付き合え」
「それは別にいいんですけど…
どこに付き合うんですか?」
首をかしげるあたしに
先輩はあごをくいっと動かした。
先輩が示した先には大きな観覧車。
!?
「あれ乗ってから帰ろう」
手を腕から手に握りなおし
振り向いて笑顔を向ける先輩に、
あたしは必死に顔を振った。
「む、無理です!
観覧車なんて乗れません!」
「は?今度は高所恐怖症か?」
「そうじゃなくて…
乗るタイミングが掴めないんです…」
そう言うと、先輩は吹きだした。
「タイミングって、ゴンドラに乗る?」
肩を震わせて笑う先輩に、
恥ずかしくなりながらも小さくうなずく。



