「…昨日楓ちゃんが家に来たんですけど、
その時にお兄ちゃんに話を聞かれて
今日のデートのことバレちゃったんです。
楓ちゃんに話を合わせてもらって
なんとか誤魔化したんですけど
完全には信じてくれなくて
『デートじゃないなら
6時には帰ってこれるだろ』って…」
「それで門限か…」
そう呟くと、黙りこんでしまった先輩。
あたしの方を見てくれない先輩の横顔は
すごく不機嫌そう。
…当たり前か。
「…ごめんなさい!」
あたしは頭を下げた。
「せっかくのデートなのに
あたしのせいで気分悪くさせちゃって…」
「あ?」
「それに、先輩が寝ちゃったからって
あたしまで寝ちゃって時間が無くなって…
居眠りなんてしなかったら
門限があっても十分楽しめ…」
「ストップ!」
あたしの腕を掴み言葉をさえぎった先輩。
驚いて顔をあげたあたしと目が合うと、
ため息まじりに口を開く。
「『あたしのせいで気分悪く』
…って、何?」
「え?」
「まさか、門限のせいで俺が怒ったって
思ってんじゃねぇだろうな?」



