君に染まる(前編)



そう言いながら
近くにあったベンチに座ると、
手を繋いだままあたしを見上げた。



「あ…えっと…正確にはお兄ちゃんが…」



「は?」



「厳しいのは厳しいんですけど…
親じゃなくて、お兄ちゃん、なんです…」



そう…
あたしがこんなに焦らなきゃいけないのは
全部お兄ちゃんのせい。



「お兄ちゃん、
昔からすごいシスコンなんです…」



「それで、
大事な妹がデートするって知って
こんな時間に帰って来いって?」



「あ、いや…
デートのことは話してません」



そう言うと、先輩は顔をしかめた。



「…言ってねぇのか?」



「はい…話したらたぶん、
デートをぶち壊すと思うんで…」



「はっ…ずいぶん逞しいアニキだな」



そう言った先輩は、
繋いでいた手を離して顔をそむけた。



「で?デートって知らねぇなら
なんで門限厳しいんだ?
それともいつもこれくらいなのかよ」



「いつもは門限なんて無いんですけど…
昨日いろいろあって…」



「なんだよ、いろいろって」