君に染まる(前編)



そんなあたしの焦りは
無意識に手に力を込めていて、



「そーいえば夜はパレードも………
どうかしたか未央?」



手を強く握られたことで
あたしの様子に気付いた先輩は、
必死に携帯を見つめていたあたしの顔を
不思議そうに覗きこむ。



「なんだ?まだ気分悪いのかよ」



「あ……いや…な、なんでもないです…」



「なんでもないって顔じゃねぇぞ、言え」



う…。



真っ直ぐ見つめてくる先輩の目に
嘘はつけそうにない。



あたしは観念して口を開いた。



「…………門限が」



「門限?」



小さくうなずくあたしに
先輩は鼻で笑った。



「はっ…小学生ならともかく、
こんな時間に帰る高校生が
どこにいんだよ」



「ここにいるんです…」



「…まじで言ってんの?」



「……はぃ」



「何?
お前ん家ってそんなに厳しいのかよ?」