君に染まる(前編)



いつも以上に弱弱しいその声に
変に焦ってしまう。



「好きな女に無理させるなんて、
俺最低だな…」



「あの…
そんなに心配しなくても平気ですよ?」



気分が悪いって言ったって
ただの乗り物酔いだし…。



「我慢すんなって」



「我慢とかじゃなくて本当に…」



「もういいから」



必死になるあたしをなだめるように、
あたしの頭を優しくぽんぽんと叩く。



「しばらく休んでろ。
これ以上お前の青い顔なんて見たくねぇ」



あ、青い?



先輩の言葉に思わず頬を触る。



自分では平気なつもりでも、
先輩から見たら
無理してるように見えたのかな…。



これ以上先輩に心配かけられないし、
早く元気になろう。



そう思いながら
ジュースに手を伸ばした時、
先輩があたしに寄り添うのを感じた。



ジュースから先輩に視線をうつす。



………寝…てる?



気持ち良さそうに寝息をたてる姿に
思わず笑みがこぼれる。